十月の自動販売機

町に最初の自動販売機がやって来たのは、一九六二年の十月だった。

それは郵便局の前に設置された。

銀色の胴体を持つ、背の高い機械だった。夜になると側面のガラス管が淡い青色に光り、遠くから見ると、まるで宇宙船の部品みたいに見えた。

町の人間は最初、それを信用しなかった。

田舎町にはよくあることだ。

新しいものは、まず眉をひそめられる。

特にそれが、どこか静かすぎる場合には。

「何を売るんだ?」

床屋のモーガンが言った。

「新聞じゃないか」

「いや、煙草だろう」

「冷えたコカ・コーラだって話だぞ」

人々は好き勝手なことを言った。

だが誰も実際に利用しようとはしなかった。

理由は簡単だった。

その機械には、商品の表示が何もなかったからだ。

ボタンはひとつだけ。

値段表示もない。

ただ正面に、小さな真鍮のプレートが付いている。

そこにはこう刻まれていた。

「あなたに必要なものを」

最初に使ったのは、エディ少年だった。

十一歳。

痩せた身体に、いつも擦り切れた野球帽をかぶっている。

父親は三年前に失踪していた。

母親は町外れのランドリーで働いている。

エディは学校帰り、郵便局前で立ち止まった。

夕方だった。

十月の風が吹いている。

落ち葉が歩道を転がり、自動販売機の足元へ集まっていた。

エディはポケットを探った。

ニッケル硬貨が一枚。

彼は少し迷ってから、それを投入口へ入れた。

機械が低く唸る。

内部で何かが回転している音がした。

やがて、小さな取り出し口が開く。

中には古びた野球ボールが入っていた。

白い革は少し黄ばんでいる。

だが縫い目だけは鮮やかな赤だった。

エディはそれを見た瞬間、息を呑んだ。

父親のボールだった。

なくなったと思っていた。

父親が失踪する前の夏、庭でキャッチボールをした時に使っていたものだ。

内側に、小さく「E」の文字が書いてある。

エディは周囲を見回した。

誰もいない。

夕焼けだけが、ガソリンスタンドの窓を赤く染めている。

彼はボールを握りしめて家へ走った。

翌日、その話は町中に広まった。

最初は誰も信じなかった。

だが数日後、別の人間が試した。

未亡人のグレイスだった。

夫を戦争で亡くして以来、黒い服ばかり着ている女性だ。

彼女は十セント硬貨を入れた。

出てきたのは、小さなガラス瓶だった。

中には古い香水が少しだけ残っている。

夫が若い頃につけていた香りだった。

グレイスはその場で泣き崩れた。

それから町は変わった。

人々は毎日、自動販売機の前に列を作るようになった。

ある者は失くした懐中時計を受け取り、ある者は幼い頃の絵本を受け取った。

牧師は、死んだ母親のレモンパイの匂いがするハンカチを受け取ったという。

誰もが、自分に必要なものを受け取った。

少なくとも、最初のうちは。

町の人間は次第に、その機械へ依存し始めた。

夕食後、家族で郵便局前へ向かう。

教会帰りに立ち寄る。

学校を休んだ子供が、一人で硬貨を入れる。

機械は決して間違えなかった。

人々が心の奥で本当に求めているものを、正確に差し出した。

十一月のある夜、保安官のルイスが言った。

「気味が悪い」

彼はダイナーでコーヒーを飲みながら、自動販売機を窓越しに見ていた。

「ただの機械じゃない」

向かいに座っていた新聞記者のヘレンは肩をすくめた。

「便利ならいいじゃない」

「便利すぎるんだ」

ルイスは低い声で言った。

「あの機械は、人間の考えてることを知ってる」

ヘレンは笑った。

だがルイスは笑わなかった。

その頃から、妙なことが起き始めていた。

町の人々が、少しずつ現在に興味を失っていったのだ。

みんな過去ばかり見ていた。

昔の恋人。

失われた夏。

死んだ家族。

戻らない日々。

自動販売機は、それらを優しく差し出し続けた。

まるで人間を眠らせるように。

十二月、雪が降った。

その夜、エディは再び郵便局前へ向かった。

町は静かだった。

窓の内側にはクリスマスの灯り。

遠くで列車の汽笛が聞こえる。

エディはポケットの中の硬貨を握った。

彼はまた父親に会いたかった。

少なくとも、何か父親の痕跡が欲しかった。

機械の前に立つ。

青い光が雪に反射していた。

エディは硬貨を入れた。

機械が動く。

だが今回は長かった。

内部で、何か巨大なものが回転している音がする。

やがて取り出し口が開いた。

中には鍵が入っていた。

古い真鍮の鍵だ。

エディは見覚えがあった。

父親の工具小屋の鍵だった。

もう何年も開けていない。

エディは雪の中を走った。

家の裏庭へ回る。

工具小屋は月明かりの下に立っていた。

彼は震える手で鍵を差し込む。

扉が開いた。

暗い匂いが流れ出す。

油と木材と古い冬の匂い。

中には何もなかった。

少なくとも最初は。

だが奥の壁に、小さな金属箱が置かれていた。

エディは箱を開けた。

中には録音テープが入っている。

父親の字で「エディへ」と書かれていた。

家へ戻り、古い再生機へ入れる。

ノイズ。

そして父親の声。

「もしこれを聞いてるなら、たぶん俺はもう町にはいない」

エディは息を止めた。

「怒るなよ。父さんは宇宙へ行くんだ」

少年は眉をひそめた。

父親は酔っ払いではなかった。

冗談を言う人間でもない。

「信じなくてもいい。でも聞いてくれ」

テープの向こうで、遠くに低い機械音が聞こえる。

「町へ来るあの機械は、人間が作ったものじゃない」

エディは窓の外を見た。

雪の向こうに、郵便局前の青い光が小さく見える。

「あれは探査装置なんだ」

父親の声が続く。

「人間を調べてる。何を愛し、何を失い、何を求めるかを」

ノイズが混じる。

「たぶん、連中は知りたいんだ。人間って生き物が、どうして過去にあんなに執着するのかを」

エディの胸が冷えた。

「父さんは、あれを追う」

しばらく沈黙。

それから小さく笑う声。

「だって考えてみろよ。星を越えて来た連中が、一番不思議に思ったのが、人間の思い出なんだぜ」

テープはそこで終わっていた。

翌朝、エディは郵便局へ向かった。

だが自動販売機は消えていた。

雪の上に長方形の跡だけが残っている。

町中が騒ぎになった。

保安官は盗難を疑った。

町長は軍の実験だと言った。

だが誰も本当のことは知らなかった。

その日から、町は少しずつ元へ戻っていった。

人々は再び現在を生き始めた。

子供は野球をし、大人は仕事をし、教会では賛美歌が歌われた。

だが時々、誰かが郵便局前で立ち止まる。

まるで何かを待っているみたいに。

数年後、エディは大人になった。

彼は町を出て、電気技師になった。

結婚もした。

子供も生まれた。

だが十月になると、時々あの夜を思い出した。

雪。

青い光。

父親の声。

そして、自動販売機。

一九七八年の秋、エディは出張先のアリゾナで、小さな町へ立ち寄った。

夕暮れだった。

モーテルへ向かう途中、彼は道端で足を止めた。

郵便局の前に、銀色の機械が立っていたからだ。

青い光。

真鍮のプレート。

「あなたに必要なものを」

エディはしばらく動けなかった。

やがて彼は、ゆっくりとポケットへ手を入れた。

硬貨が一枚あった。

十月の風が吹いている。

遠い星々の匂いがした。